「エクダ2 ユニコーンの谷」

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全58頁

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セタ・コミューンにある日突然帰郷した一人の男。だが、その時から奇妙な出来事が頻発するように…? 「エクダの泉」続編。SFミステリー。WEB連載作品。

前作「エクダの泉」は旧版の設定を使えるところはそのまま使っていたのですが、キャラやストーリー構成を少し変えたため、一部に説明不足なところが生じていました(背景には太陽電池や風力発電が描かれているのに、コミューンの生活には電気を使っている描写がなかった、等の矛盾)。その部分を補足する目的で始めた「2」でしたが、思わぬ苦労もありました。

「2」ものの難しさ。
実は「2」ものを描いたのはこれが初めてです。これまでは1回で完結する話しか描いたことがなく、「泉」自体も「2」を想定して作られていなかったため、いざとなると思っていた以上に難しかった~というのが実感でした。特にキャラが出来上がっていたケンイチとルゥは動かすのに苦労しました。油断すると展開無視してくれたり(汗)、無理にストーリーに合わすとキャラが不自然になったり…。それを補完・修正するためにネームの推敲と書き直しは「泉」の数倍、そのせいで頁数も増える…。そういう意味では新キャラのシンは動かしやすかったですね。これが初出なので、どう描いてもそういう人なのよ、で通る部分がありましたから。自分はまだまだキャラ主体の話作りに慣れてないなーと実感させられた作品でもありました。

「2」で描きたかったこと。
ユニコーンの谷で描きたかったことはいくつかありますが、そのうちの1つがケンイチの世界の広がりでした。「泉」でケンイチはルゥを得ましたが、せっかく続きを描くのなら、さらに彼の世界を広げてあげたいと考えました。そのために2人のキャラを新たに設定。1人の果たした役割はすぐ分かると思いますが、もう1人も実は大事な役割を演じています。「泉」では自分のことしか見えていなかったケンイチが、ルゥを得て、シンを得て、そしてコミューンへももう1歩溶け込んで、少しずつ世界を広げていく様子を見ていただけたらと思います。

SFとミステリー。
「泉の謎」の解明は前作で終っているので、「2」では何か事件が起こってそれを解決する、みたいな難しくなくて娯楽性に富んだ物語を、という方向で作りました。そこでちょっとミステリー色のあるストーリーを考えてみたわけですが、ここで気をつけたのは、エクダならではの設定を外さない、ということです。ただミステリーをやりたいだけなら、エクダである必要もSFである必要もない。ここでやるからには、やっぱりエクダならではの特殊な設定が事件のキーワードになる必要があります。そしてエクダシリーズを包んでいる、大きなテーマに関しても。推理ものとしては単純で簡単な作りになっていると思いますが、SFならではの要素を組み込むことによって、ここでしか読めない、ここでしか楽しめない、エクダならではのミステリーになれば…と思いました。
なお、作品がそういう作りになっているため、「エクダの泉」の謎が分かっていないと理解できない部分があるかと思います。「泉」未読の方は、まずはそちらから先に読んでみて下さい。

2024年発行のペーパーバック「エクダの泉」に収録。

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