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隊商の商品の中に紛れ込んでいた1個のロケットペンダント。そこにはケンイチの父の若い頃の写真が入っていた。ペンダントの謎を解明するために地球へ行ったケンイチが見つけた父の秘められた過去とは…。
9年ぶりのエクダシリーズ3作目。ケンイチの父の若い頃のお話です。実は原案自体はエクダ連載当時から浮かんではいたのですが、主人公がケンイチではなく父の方なので、番外編として出せればいいかな…と考えていました。が、惑星エクダが舞台の物語であることに違いはないし、最初と最後だけとはいえ、ケンイチもルゥも登場するのでシリーズ3作目として出してみることにしました。
ところでロイドで中断していた9年のギャップが思わぬところで噴出し、話作りとは別なところでおおいに苦労した作品です。その影響は本作「ソウル・コミューン」だけにとどまらず、前2作「エクダの泉」「ユニコーンの谷」にまで及ぶと言う、それはもう大変なことに。
IT進化とSF。
昨今のIT進化が速過ぎて、わずか9年の間にIT世界も激変。泉を描き始めた頃はネットもまだまだ遅くて、動画サイトなんてなかった。しかも前2作を描いた頃は私はまだ携帯すら持っていなかった(携帯買ったのはロイド3話を連載してた頃です)。あの頃はフロッピーとかMOとか使ってたのに、彼らは今何処へ消えた…。ディスプレイもブラウン管だったのにいつのまに液晶(それもワイド)になった…。テレビはアナログ放送終わるし、新聞もデジタル化するし、ニュースもスマホやパソコンで見る&情報管理もネットで行うクラウド時代到来。
スマートフォンやタブレットPCの登場は衝撃でした…。昭和生まれの自分から見たら想像を超えて未来的すぎです。まさか生きてる間にあんなものを見られるとはっっ。もう現実がSFを超えてます(汗。
IT設定の見直しと原稿修正。
エクダ3を描くに当って、前2作を見直してみたら、時代遅れ描写がいっぱいあって自分でも愕然。エクダは恒星間旅行が出来て惑星植民が出来る時代。今よりずっと未来の時代。その未来世界でフロッピーやMOなんてあり得ない(汗。ブラウン管もあんまり過ぎ。紙のテープをカタカタ打ち出すのもあり得なさ過ぎる(汗汗。当時では自分で思いつく最先端を描いてたつもりだったんですけどね…。
取りあえず「明らかに時代遅れなもの」を一掃し、キーボードや古いタイプのディスプレイも今より未来的なものに変更するなど、前2作もメカ部分を中心にある程度未来的なものに修正しました。修正箇所は2作合わせて20頁近くに及び、エクダ3の連載を始める前にこの作業を済ませておかねばならなかったので大変でした…。
未来を想像することの難しさ。
今回のことで、凡人が想像できるのは「現実の延長」でしかないのだ…ということを痛感しました…。未来を想像するには現実の延長じゃ駄目だ、抜本的な発想の転換が必要だなと思いました。アナログからデジタルになったからデジタルの未来を描く、ではなくて、デジタルなんてもう古臭いというくらいの全く新しい別の何か(デジタルの次に来るもの等)を思いつくぐらいでないといけないなあと。自分にそこまで出来るかは分かりませんが(出来ない気がする…)、その精神だけでも心の片すみに置きながらSFにチャレンジしていければと思います。
2024年発行のペーパーバック「エクダの泉」に収録。