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助けた亀から恩返しに「竜宮」というゲームをもらった男。だがそのゲームには「条件」が付いていた…。
SFおとぎ話。いわゆる浦島太郎ネタをSFでやってみたら…という作品ですが、SFアイデアを楽しむだけでなく、おとぎ話や寓話も盛り込んだ欲張りな作品になりました。
SFネタについて。
浦島太郎ネタをSFでやるなら、亜光速宇宙船(光速に近づくほど宇宙船内の時間は遅くなるので、宇宙船で数日過ごし地球に戻ってきたら何十年も経っていた…というあれです)がまず思い浮かびますが、これはそれとは違って、実はインペリアル・ドリームの構想を練っていた時に浮かんだアイデアの1つが元になっているんです。
インペリアル・ドリームには仮想空間が出てきます。惑星バースの仮想空間を作っているのはバースの森。森で作られた仮想マシンでは計算スピードが遅いかもな…。だったらバースの仮想空間での1時間は現実世界では数日になるかもな…。省吾と奈津子が体験した数時間が実際には1ヶ月も経っていたとしたらどうだろう!? おっ、浦島太郎みたいで面白いかも! しかしクフ王子が望んでいるのは仮想空間での復活ではなく、現実世界での復活。だったら仮想と現実で時間のギャップがあるのはまずいわ…てことで、この案はボツになりました。でも「仮想世界と現実世界で時間の流れが違う」という思いつき、自分では気に入っていて、別の形で何か作品に出来ないかな…と思っていました。
それで「仮想と現実の時間のずれ」をテーマに取り組んでみたのですが、SFとして仮想ゲームを描くには他に解決しなきゃいけない問題も色々出てきて、その辺を上手く処理するために、おとぎ話(ファンタジー)の中にSFネタを入れるという形でまとめることにしました。
おとぎ話・寓話としての面。
そういう経緯で「SFおとぎ話」という形に落ち着いたこの作品ですが、おとぎ話ふうにすることで寓話的な面も盛り込むことが出来、SFに興味のない方でも楽しめるようになったのではないか…と思っています。もし自分が主人公の立場ならどうする?主人公と同じ考えになる?それとも…といった面でも楽しんでもらえたら嬉しいです。
2023年発行のペーパーバック「時の声」に収録。